いわて県南の旅・web情報誌 ゆいたび

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奥州藤原氏の栄光の地・平泉で伝統的工芸品『秀衡塗』の技を受け継ぐ

佐々木優弥さん
秀衡塗専門店『翁知屋』
佐々木優弥さん

源氏雲や縁起の良い草花の文様に、『有職菱』と呼ばれる菱形の金箔。奥州藤原氏が生み出した格調高い漆器は、『秀衡塗』という名で現在まで受け継がれています。平泉町にある秀衡塗専門店『翁知屋』の4代目・佐々木優弥さんも、その技を守り継いでいる一人。そして最近は、伝統技法に新しい表現を取り入れた「塗り」に挑んでいます。

20を超える工程で「丈夫な塗り」に

 昭和60年に国から伝統的工芸品に指定された『秀衡塗』。源氏雲や草花、鶴などが描かれ、『有職菱』と呼ばれる菱形の金箔が施されたものが伝統的な意匠で、黒・朱・金を基調にした色調からは品格が漂います。

 しかし一方で、椀に代表されるようにもともと実用食器だったことから、真っ先に求められたのは「丈夫な塗り」。そのため作業工程は、「塗り」の間の「研ぎ」も含めると20を超えるといわれています。

秀衡塗の起源については、奥州藤原氏によって近江の国から招かれた漆工職人が、藤原氏の滅亡によって現在の奥州市衣川区の増沢部落に落ち延びて技を守り継いでいった、あるいは、増沢部落に釣りにやって来た藤原秀衡や源義経が、部落の漆を刀剣の鞘に塗らせたことがきっかけで漆器が作られるようになった、など、いくつかの説が伝わっています。ただどちらにしてもルーツは増沢部落にあるとされ、佐々木さんの先祖もそこで代々漆工房を営んできた一人でした。そして昭和31年のダム建設を機に佐々木さんの祖父が平泉町に移住して、『翁知屋』を開いたのです。

特注品製作に「楽しさ」を見い出して

 実は佐々木さんは、順調に後継者の道を歩んできたわけではありませんでした。東京で大学生だった5年前、内定をもらった一般企業に就職するつもりだったのだとか。

 「私は3人兄弟の長男でしたが、子どもの頃から特に家業を意識していなかったですし、家族も跡継ぎというプレッシャーをかけなかったので、別にいいかなと。でも直前になって大学のゼミの先輩から、『何百年も続いた文化を残すことと、内定をとるために就職活動をしていた会社に勤めることと、どちらが大事か』と言われて迷い始めまして。そんな時にちょうど父親が病気になったので、結局帰ってきたんです」。

 そうした事情から、最初は仕事に前向きに取り組むことができなかった佐々木さんですが、自社工房に30年勤める職人や同業者でつくる組合の先輩から教わったり、専門書を読むなどして、技を習得。そのうち次第に定番商品でなく特注品の仕事が入るようになり、楽しさに目覚めてきたといいます。

 「下地や塗りなど基本さえ守れば、お客さんの志向に合わせて多少自由に表現してもいいのでは、と思うようになり、積極的にお引き受けしています。お客さんと意見を交わしながら仕上げる過程が楽しいんですよ」。

 そんな特注品の一つが、花魁人形を描いた急須台。人形作家の女性が自分の作品である花魁人形を身近な器として残したいと注文してきたものです。急須台に描かれた絵は、素人が見ても完成度が高いもの。子どもの頃から絵を描くのが好きだったという佐々木さんならではの漆器といえるでしょう。

蔵を改装した展示販売施設に夢を託す

 もう一つ、佐々木さんの意欲の源となっているのが、職人仲間たちとの交流です。
 漆塗りの職人仲間とは、昨年から『古代秀衡椀』の復元に取り組んでいる最中。また、岩手県の補助事業である勉強会『クラフトマン養成塾』で知り合った様々な業種の若手職人たちとは、春に開催予定の展示会に向けた「作品製作」を通して、切磋琢磨しています。

 そんな仲間たちとの交流の中で、佐々木さんは新たな試みを決意しました。それは、敷地内の蔵を改装して、県内の作家や若い職人たちの作品の展示販売施設をつくること。県内で作られる工芸品の情報発信を目指すとともに、若い職人たちが仕事に行き詰まった時の「再発見の場」になることを願います。

 佐々木さんにとって仕事や仲間との交流を純粋に楽しむことは、900年もの伝統を、気負うことなく守り継ぐことができる秘訣なのかもしれません。

翁知屋

◆翁知屋

黒、朱、金を基調とする秀衡塗は、その豪華な造りから家庭用だけでなく贈答品としても人気。代表的な蓋付きの椀「秀衡椀」は特別な贈り物としておすすめですが、ほかにも店内には手頃な値段の箸や急須台なども揃っており、旅の土産にぴったりです。また、秀衡塗だけでなく、県内在住の若手作家による現代風の漆器も展示販売。店の奥にある工房では、要予約で製作の様子が見学できます。

■所在地/岩手県西磐井郡平泉町平泉字衣関1-7
■営業時間/9:00~18:00
  定休日/水曜日
■電話/0191-46-2306
■駐車場/有り
■ホームページ
  http://www.ootiya.com
※工房見学は水曜・日曜を除く9:00~15:00で、10日前にFAX(0191-46-2315)にて要予約。