いわて県南の旅・web情報誌 ゆいたび

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全国各地のファンを魅了する宮沢賢治の生き方

宮澤雄造さん
宮沢賢治記念館
館長 宮澤雄造さん

詩人や童話作家としてのほか、農業・哲学・宗教・科学・音楽・生物など幅広い場で活躍した宮沢賢治。作品やその背景にある生き方や考え方は、死後70年以上経った今でも全国各地のファンを魅了しています。そんなファンが集う花巻市の『宮沢賢治記念館』の宮澤雄造館長に、賢治の魅力と彼を育んだ環境についてお話ししていただきました。

信仰心の厚い父親の影響を強く受ける

 宮沢賢治の親戚でもある宮澤館長は、賢治の魅力について次のように分析します。

 「賢治は学校の先生を辞めて、農民がもっと楽な生活ができるよう羅須地人協会を設立し、農民とともに生きることを選択しました。『自分が犠牲になっても他の人を助けたい』という賢治の生き方を、自分の人生の指針や目標にしたい、という人たちが多いのではないかと思います」。

 そんな賢治の生き方の背景には、両親、特に父親の影響が強くありました。

 賢治の家は代々質屋を営み、浄土真宗の熱心な門徒でした。しかも父親は菩提寺である安浄寺の檀家の総代までつとめたほど信仰心が厚い人で、そのため賢治も小さい頃から熱心な信者だったとか。さらに父親は地域の民生委員もしていることから、「他人のために」という賢治の考え方・生き方は、父親から受け継いだものと想像できます。

 しかしその反面、質屋という父親の仕事を毛嫌いしていました。質屋はお金に困った人を助けているのだと理解する一方で、「搾取しているのでは?」という考えから抜けられなかったようです。家業に対するそのようなジレンマも、賢治が教師から農業へと道を変えたことに関係していたのでしょう。

農家の貧しい生活を知り、農業の道へ

 賢治の転機は、花巻農学校の勤務時代にやってきました。教師として農家出身の学生たちと過ごす中で彼らの貧しさを知り、農業や農村について深く考えるようになるのです。

 「ある日、生徒の一人が気分が悪くなって朝食に食べたものを吐いたのですが、それを見た賢治は彼がちゃんとした食事を食べていないことを知り、ショックを受けたそうです。朝から晩まで働いている農民たちがこんなに貧しい生活をおくっているのに、教師の自分は高収入を得ている。そのギャップにとても悩み、苦しんだようですね」と宮澤館長。

 こうして賢治は教師を辞めて大正15年に羅須地人協会を設立。病に倒れる昭和3年まで、農耕生活をしながら地域の農民に農業や科学、芸術などを教えたのです。

賢治の童話が大人も魅了する理由

 前述の「信仰」は、賢治の生き方だけでなく作品にも大きな影響を与えました。実は賢治が童話を書き始めたのも、所属していた法華経団体『国柱会』の幹部から、「ペンで教えを広めたらどうか」と勧められたのがきっかけなのだそうです。

 「『銀河鉄道の夜』をはじめ、賢治の童話にはキリスト教も含めた宗教色の強い作品が多いと思います。だからこそ、大人も強く惹きつけられるのはでないでしょうか」と宮澤館長は推測します。

 さらに賢治は、ふるさとの花巻、岩手の自然を深く愛しました。作品の中では動物にも植物にも鉱物にも人間と同じように生き生きと話をさせていることも、大きな特徴です。

 『宮澤賢治記念館』では、こうした作品や原稿を中心とした資料を8部門に分けて展示しています。周辺には、賢治の童話の世界が体感できる『宮沢賢治童話村』、賢治研究者や愛好者が発表した様々なジャンルの作品・資料を収集した文学館『宮沢賢治イーハトーブ館』もあり、「どれも派手な宣伝などしない地味な施設ですが、それぞれテーマ性を持って賢治の世界を伝えるという役割をしっかり果たしています」と宮澤館長はPRします。

 詩『雨ニモマケズ』は、花巻在住の清貧な無教会主義キリスト教徒・斎藤宗次郎がモデルといわれていますが、宮澤館長の説明する各施設の特性や斎藤宗次郎のような人柄にも、花巻の風土や花巻人気質が感じられます。これもまた、賢治や作品を育んだものといえるでしょう。

宮沢賢治記念館 宮沢賢治記念館

◆宮沢賢治記念館

宮沢賢治の作品や愛用品などを展示するほか、ビデオやスライドなどで視覚的に賢治の世界に親しむことができる施設。賢治の生家は昭和20年の花巻空襲で焼失したため遺品の数は少ないのですが、そんな中で愛用したセロや鉱石採集に使った顕微鏡などの展示品は貴重です。また図書資料室には、賢治の各種全集類や研究所など2000点の書籍があり、自由に読むことができます。

■所在地/岩手県花巻市矢沢1-1-36
■開館時間/8:30~17:00(入館は16:30まで)
  休館日/12月28日~1月1日
■電話/0198-31-2319
■駐車場/有り
■入館料/小・中学生150円、高校生・学生250円、一般350円
※それぞれ団体割引有り
※宮沢賢治童話村、花巻市博物館、花巻新渡戸記念館との共通入館券有り
(イーハトーブ館は入館無料)