いわて県南の旅・web情報誌 ゆいたび

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一つひとつ、こねて、丸めて懐かしい味「こびる」を作る

坪井愛子さん
こびるの家
代表 坪井 愛子さん

遠野ふるさと村内を散策すると、ちょうど歩き疲れたころ目に入るのが休み処「こびるの家」の看板。まぶりっと衆の一人である坪井愛子さん達が振舞う、昔ながらの料理やおやつは、心が和む優しい味がします。それは、手に入る材料を無駄にせず、家族に美味しいものを食べてほしいと願い受け継がれてきた、母の味を感じるからかもしれません。

子どもの頃に食べた味を継いでゆく

 坪井さんを含む3人の女性で切り盛りする「こびるの家」は、遠野ふるさと村内に設けられた食事施設。素朴な田舎料理が人気の店です。みそ焼きおにぎり、煮豆、切干ダイコン、おでんなどが並んだ「こびる定食」、だんごなど一品一品が手づくり。観光シーズンの週末は、遠方からの団体客で店内も大賑わいです。

 そもそも、「こびる(小昼)」とは、農作業の合間に食べるおやつのこと。こうした習慣は各地にあるようですが、遠野地方では主にだんご類を食べることが多かったのだとか。

 「こびるは畑仕事の合間につくるから、身近にある材料で簡単にできるものばかり。餅はつく手間がかかるでしょう、だんごは粉を使って手先仕事でできるから」と坪井さん。

 その作り方や味は家によってもさまざま。坪井さん達も、自分が幼い頃に食べた味を思い出しながら作っているそうです

 「小さい頃は、祖母が大福などをこしらえてくれました。時々、囲炉裏にかけた鍋に、だんごを丸めていれる手伝いはしましたが、自分で作るようになったのは、ここで働くようになってからなんですよ」と坪井さん。実は、こびるを日常的に作っていたのは、農作業が生活の中心であった世代まで。生活スタイルも変わり、自宅でだんごを作る習慣も少なくなった今、坪井さんたちは、伝統の味を若い世代に受け継ぐ大切な位置づけにいるわけです。

ひと手間かける心と工夫がみえる味

 毎日、坪井さん達が作るこびるは、ひっつみ、きりせんしょ、かねなり、焼き餅にへそっこだんご。耳慣れないものもありますが、どれもこれも、遠野ではなじみ深い食べものです。厨房をのぞくと、ちょうど焼き餅づくりの真っ最中。坪井さんの作業をのぞいてみました。焼き餅は、残ったご飯をおかゆ状に炊き、粉とあわせて生地を作ります。生地の中に黒糖と味噌を混ぜたアン、クルミを入れ、大きな鍋で茹でること数分。さらに、こんがりと焼き目をつけるのですが、このひと手間が、風味と味わいを増すのだそうです。

 「昔はだんごを作ったら、隣におすそ分けをしたりしてね。近所同士のつながりにも一役買っていたようです。今日はうまくできたとか失敗したとか、だんご談義に花を咲かせながら、少しずつ工夫を重ねていったんでしょうね」と微笑む坪井さんは生粋の遠野っ子。

 四方に広がる美しい山々に囲まれ、澄み切った空気に包まれた贅沢な環境が、子どもの頃からごく当たり前にあったといいます。ここで生まれ育って結婚した坪井さんは、子育てをしながら家の仕事を手伝ってきましたが、数年前に縁あって「こびるの家」を引き継いで以来、郷土の味を守っているのです。

 「時々、子どもを訪ねて東京に行くと、いろんな騒音があふれているでしょう。帰ってきても耳について離れなくて。やっぱり、遠野は一番落着く場所ですね」。遠野に根を張って生きる、という骨太な言い方は坪井さんに似合わない。そこには、土地と緩やかにつながって暮らす、「まぶりっと」の自然な姿を感じることができます。

 

 

 

遠野ふるさと村

◆遠野ふるさと村

一歩足を踏み入れると、懐かしい農村風景が広がる「遠野ふるさと村」。村内には江戸中期から明治期に建てられた曲がり家が点在し、昔の山里暮らしを体験できます。遠野地方に伝わるワラ打ちや田植えなど、季節に応じた体験メニューも盛りだくさん。村内に常駐する「まぶりっと(守り人)」が農村体験のインストラクターとして親切に教えてくれます。

■所在地/岩手県遠野市附馬牛町上附馬牛5-89-1
■開村時間/9:00~17:00(入村は16:00まで)
■休村日/12月29日~1月2日
■電話/0198-64-2300(代表)
■駐車場/有(大型4台 普通100台)
■入村料/一般520円 小・中・高校生310円 ※団体割引有り
■ホームページ http://www.tono-furusato.jp/

こびるの家

◆こびるの家

■営業時間/10:00~16:00
■営業期間/4月25日~10月31日まで(冬期は休業。営業日程は変更の場合があるので、
  遠野ふるさと村に要確認)

草木染め体験

◆草木染め体験

遠野ふるさと村にある「染め工房ほたる」では、草木染めや藍染めを体験できます。モデルツアーでは、マリーゴールドやアカネなどを使った草木染め体験に挑戦。遠野の野山で採った草木を染料にして、ハンカチやコースターなどを作ってみましょう。また、併設するギャラリーでは、草木染めの作品のほか、陶芸館や木工館でつくった作品を展示販売しています。
※体験は要予約。詳しくはお問い合せください。